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デフアカデミーからアトリエへ。「自分の道」を生きる航大くん
航大くんがデフアカデミーに通い始めたのは中学2年生の夏ごろ。
高校ではアパレル情報科へ進学し、3年生の夏には洋裁アトリエへ弟子入り。
高校卒業後、「縫い人」としての技術を磨いています。
今回は、そんな航大くんにスタッフの日下がインタビューをしました。
🎓 デフアカデミーからアトリエへ
(日下)まず、縫い物を始めたきっかけから聞いてもいいですか?
(航大くん)服を作り始めたのは高校からですが、縫い物そのものは小さい頃からやっていました。母や祖母の影響です。曾祖父が仕立て屋だったこともあり、自宅には裁縫道具が揃っていました。
ぬいぐるみとか人形が好きだったんですけど、なかなか買えないので、「じゃあ自分で作っちゃえ!」って(笑) 初めて作ったのは小学3年生のときです。誕生日やホワイトデーに、友達にあげたりもしてました。
(日下)へ〜素敵ですね!!小学生で、自分で作ってみようと思えたところに航大くんの持って生まれたクリエイティブの素質を感じます。
🤝デフアカデミーで出会った「自分らしく」生きるロールモデル
(日下)高校卒業後にそのままアトリエに弟子入りするって珍しい選択だと思ったのですが、その道に進むことに迷いはなかったですか?
(航大くん)学校の授業で一般の企業に実習にいく機会があったのですが、一般企業に入っても自分のやりたいことができるのか?と違和感を持って。
そこで、はじめ(高校卒業後)から自分が決めた道で生きたいという気持ちになりました。
あとやはり、デフアカデミーでアーティストや、自分の道を生きるろう者のロールモデルと出会う機会があったんです。
「こんなふうに生きてる人がいるんだな」って憧れもありましたし、実際に話を聞けるのが、すごく後押しになりました。

✨️自分の道を生きるロールモデルになりたい。その「武器」を育てる。
(日下)今後こんなことをやっていきたいというのはありますか?
(航大くん)今、自分が身につけていることを人に教えられるようになりたいです。
(日下)自分が技術を磨くだけでなく「人に教えること」にも挑戦したいという想い、もう少し詳しく聞かせてください。
(航大くん)自分は耳が聞こえないから社会で活躍できる範囲が限られてくる。
聴覚障がいがあることで、自分の可能性を限られた社会の中で発揮しにくいことが悔しい、という思いがあります。
周りの人にも、頑張って働いている人もいるが、言われた通りにやっているだけの人もいます。
一緒に育ってきた先輩後輩、友達、そういう近い人が、本当はこういうことがやりたいのにできないとか、お仕事が続きにくいということをよく聞きます。
だから、自分の可能性を信じて頑張りたいと思います。
(日下)航大くんの生き方をみて、次の世代の子どもたちが自分のやりたいことを仕事にしてくれたら嬉しいよね。
(航大くん)そうですね。以前、自分がロールモデルから影響をもらったように、自分も影響を与えられるような人になりたいです。そのための自分の武器が縫うことだと思っています。
(日下)自分の道を歩くって決して簡単なことじゃないと思います。一歩踏み出す勇気だったり、困難を乗り越える力、自分を信じる力が必要ですよね。ぜひ、今度、オンラインで全国のろう難聴の子どもたちに今の航大の感じていることや実際にどうやって生きてきたのかを知ってほしいなと思います!
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👔 そして、今回の服に込めた想い
(日下)今回は、サイレントボイスが万博に出展することになって、その時に着るシャツのご依頼させてもらったのですが、依頼がきた時のお気持ちをお伺いしても良いですか?
(航大くん)まずご依頼くださった時は、お世話になったデフアカデミーに恩返しができることがすごく嬉しかったです。 頑張ってみんなに納得してもらえる服を作ろうと思って頑張っています。
あと、今回のご依頼をいただいた時に、「手話通訳者の服として条件を満たす服を作成してほしい」とお願いがありました。
その時に、「今まで手話通訳用の服です」というように売っているのを見たことがないなと思って。今までそこに注目したことがなかったので、自分にとっても新しい冒険でした。
手話通訳がないと生活が困る面もたくさんあるので、服というかたちで通訳とつながれたのがすごく嬉しいかったです。
(日下)なるほど。まず、「恩返し」という風に思ってくださっていたことがすごく嬉しいです。今、航大くんの言葉を聞いて、鳥肌が立ちました、、、!ありがとうございます。
自分が得意なことや好きなことで恩返し、相手を喜ばせることができることは、確かにとても嬉しいことですよね。
そうやって服を着る人に想いを馳せて作る航大くんだからこそ、素敵なお洋服を作れるんだろうなとも思いました。
あと、今回のポケットのワンポイントも素敵ですよね!私はとてもお気に入りです。
(航大くん)そうですね!万博の手話とSilent Voiceのロゴカラーを掛け合わせてデザインしました。 それを見て喜んでもらえたことも、すごく嬉しかったです。
(日下)ぜひ万博でみなさんにも見ていただきたいなと思っています。万博だけでなく、いろいろな場面で着ることを想像して、完成をとっても楽しみにしています!
今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
(航大くん)ありがとうございました!
✏️ 編集後記
とても丁寧で、柔らかい印象の航大くん。インタビューの中でも、家族や周りの人を想う優しさが航大くんの言葉から伝わってきました。
それと同時に、聴覚障害のある人が本来持っている力を発揮できない社会への「悔しさ」「モヤモヤ」があるからこそ「自分の可能性を信じて頑張りたい」という芯の強さに心が震えました。
一針一針に、航大くんの想いが込められているように感じます。
ぜひ、みなさんも世界に1つだけの服を航大くんに仕立ててもらってみてはいかがでしょうか?