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【のぞき見!Silent Voice社内研修】CS(顧客満足度)研修レポ_Vol.2〜自己決定力とは?
Silent Voiceが着目する「自己決定力」とは?
前回の研修レポートの続きを記事にしております。
Silent Voiceが子どもの理想状態像として掲げるのは、
”自ら夢を持ち、その実現は一人ではできないことを理解し周りを巻き込み、正しい方向に向かって適切な努力をすれば実現可能だと信じている状態”。
そのためにも、
“夢に向かってモチベーション高く(内発的動機)、自らで道を選択肢(自己決定)し、歩んでいく、ろう児・難聴児を増やす場づくり、プログラム、関わりの提供”をするのが、私たちの役割であるとしています。
今回は、このフレーズの中にもある、「自己決定力」に着目してお伝えしたいと思います。
情報量=想像力
なぜ、“自己決定力”に着目しているのか?少し長くなりますが、お話しさせてください。
耳の聞こえない子どもたちは、家族(聞こえる親が9割と言われています)やクラス(特に地域の学校)の中でも、情報保障がなく、自分だけ情報が入ってなくて過ごすことが多いということが、実際にとても多いのが現状です。
それは、特に大人や教育現場によって、悲しいかな、無意識的にも、情報提供の場を削がれてしまっているのですね。
では、自然と入るはずの情報がないと、どんなことが起こりうるでしょうか?
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例えば、人気のTikTockerをクラスのみんなが見ているとしますよね。
耳が聞こえる子も聞こえない子も関係なしに考えてくださいね。
その同じTikTockerに対して、本当はクラスの中でも、いろんな意見が交わされている。
“あ、この子は、TikTockerのこの発言に対して、ネガティブな印象なんだな”
“この子はめちゃくちゃ肯定派なんだな。その理由はこうなんだな〜”
自然と耳に入る会話の情報があったとするとします。
そういう情報が事前に入っていたら、そのTikTockerへの見方や意見の多様性を知ることができます。また、特定の意見を持っている相手に合わせて、コミュニケーションを柔軟に変えたり、思いやりを持って配慮できることもありますよね。
必ずしもとは言いませんが、もし自然に入ってくるはずの情報が入らずに、相手とコミュニケーションをとると、少しずれを感じる発言になってしまう時もあるかもしれません。
耳が聞こえに関係なく、情報を多く持つことで、より相手のスタンスや背景も想像しやすいし、視点の多さを持つことできます。
情報を知らずに主張する自分の意見と、多様な意見を受け入れた後の自分の意見とでは、伝え方も意見の深みも違ってくるはずです。
情報量=想像力だと私たちは考えています。
だからこそ、デフアカデミーのスタッフやお友達との関わりの中で、たくさんの情報のシャワーを浴びて、自然と、”こういう考え方もあるんや〜!”という学びを繰り返しながら、選択肢や視点を広げてほしいのです。
選択肢が一つだと、一つしか選べませんよね。これは自己決定ではないですね。
そのたくさんの選択肢を持った中で、”自分で決めることができる(自分の意見を持つ)”という機会を多く持って欲しいと思っています。
自己決定が伸びた事例が、デフアカデミーでありますか?
デフアカデミーでは、昨年(2022年3月)高校を卒業した美鈴ちゃんがいい事例だと思います。
▶︎美鈴ちゃんの進路決定の記事こちらをクリック
美鈴ちゃんは、お母さんがこうなってほしいという道を自分で断って、念願の動物関係の道に進まれた元デフアカデミー生です。今も、自分の決めた進路に自信を持って通っているようです。
自分で決めると、後悔しないし、人のせいにしないんですよね。
美鈴ちゃんが自分で道を決めたのは、どういう体験から?
美鈴ちゃんは、デフアカデミーに通い出した中学2年生の頃は、自分で決断するということをあまりしてこなかったと言っていました。
スタッフが、「自分の意見は?」と質問しても「うーん、、」と悩んでは、その決定を大人に委ねている様子だったのを覚えています。
でも、デフアカデミーのスタッフが問いかけ続けたんですね。
「じゃあ、どうしたらいいと思う?あなたは、どうしたいの?」と。
最初から自分の意見を言える感じではありませんでした。
意見が出ない時は
「じゃあどうしたらいいんだろう?一緒に考えよう!こうしたらいいかもね!やってみる?」と提案もしたこともありました。
そんなやりとりを重ねていくうちに、美鈴ちゃん自身も、
「あ!自分でできた!」
という感覚を持ち、小さな成功体験を繰り返してきたんだと思います。
私たちも、その“成功体験”の積み重ねと、相談できる人がいるという安心感は、意識してきました。
4年を経て、美鈴ちゃんは、“私も頑張れば、できるんじゃないかな?”という気持ちが芽生えて、高校卒業後の進路の自己決定に至ったんじゃないかなと思います。
成功経験が多ければ多いほどいいの?
では、成功体験がなぜいいのだろう?アルバイトスタッフから出た質問に、言語聴覚士を持つ岡松も答えながら、議論を進めました。
こちらもとても深い議論だったので、そのままの会話形式で掲載させていただきます。
(アルバイトスタッフ)成功体験だけではなく、失敗経験も大事なのでは?
(岡松)失敗したということをどう捉えるか?なんじゃないかな?
子どもが成長するのに、必要なのには、成功体験が必要で、失敗が少ない方がいいというわけではないと思うよ。どうしてその質問をしたの?
(アルバイトスタッフ)自分の中では、失敗する経験の方が、より成長するような気がしたからです。小学校の時に、ろうがっこうから地域の学校へ転校したときに、口話でコミュニケーションをとっていたんですよね。自分では普通に話しているつもりだったけど、スピードが猛烈に早かったらしく、友達から「何言ってるか分からない」と言ってくれたことがあったんです。その時に、スピードをもっとゆっくり言えばいいんだ!と思って、今でもゆっくりめに話すように心がけているんです。
(岡松)友達の意見に“そうか!”と思ったのは、小さい頃に成功体験を積んでいたのでは?
泣けばお母さんが来る!声を出せばお母さんがこっち見てくれる!これも成功体験ですよね?泣いてもお母さんがこない行為を繰り返すと、結果、泣かないようになってしまうんです。相手が反応してくれる、寄り添ってくれる。そういう成功体験が積もり積もって、他の人に、アドバイスをもらった方が自分のためになると受け取れるようになる。人には、成功体験が必要というのはそういうことだと考えています。
(アルバイトスタッフ)今の話を聞いて、とても納得感がありました。
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読者の皆さんは、成功体験を積むことで、こんな成長実感があったという経験はありますか?
Silent Voiceがこれから目指す子どもとの関わり方について
最後に、社内研修では、“自己決定”ができる子どもたちを育むために、スタッフがどう関われば良いかを議論しました。
私たちが目指しているスタッフの関わり方は、この2つかと思っています。
①答えを教えるのではなく、一緒に考える。
②情報をたくさん提供すること。
人って、生まれながらにして、学ぶことを楽しめる生き物だと思っているんです。
でも、情報が100%入ってこず、授業がわからないままどんどん進んでしまっている…いう環境の子どもたちがあまりに多いという実感があります。
“学ぶ”を楽しむ経験が、環境によって削がれているとしたら、もっと“わかった!”という経験の繰り返しが学生時代に必要だと思うんです。
学んでいる=成功へ向かっているという感覚がとても重要で、そのためには、一人ひとりが、学びが面白い!と思っている状態を作りたいと思っています。
働く我々も、やらされている感、言われたことを答えとして行動していては子どもにも伝わりますよね。子どもも、大人も目指す姿は一緒で、私たちが一番、学びや成長っておもしろ!と思っていたいものです!
※これで、今回のCS(顧客満足度)社員研修を終わります。皆さんは、心に残る議論はありましたか?